「うま」


ある日の昼休み。


私はいちごオレを右手に握りしめていた。


「美柑ちゃんってほんとにそれ好きだよね~!」


「美味しい」


「よかったです~!」


亜湖ともちょっとずつ距離が縮まってきた気がする。


「…あ、ねぇねぇ知ってる?なんか、ここら辺の不良がちょっとずつ動き出してるみたいなんだ」


不良、か。


「ほんと、美柑ちゃん可愛いから気をつけてね!?」


「いや、可愛くないから大丈夫だよ」


それに、一応私もその1人だし。


でも、亜湖を危ない所へいかせられない。


綺麗な顔に傷を作ってもらったら困るから。


ちゃんと守らないと。


「…あれ?音葉がいちごオレ飲んでる!?」


「ほんとだ」


「…なんだよ、飲んでたら悪いか」


音葉くんは少しブスっとしたような顔になる。


「いや、すっごい珍しいからさ。美柑ちゃんに感化されたか!」


「ま、そんなもんじゃない?隣で毎日美味しそうに飲まれたら気にもなるだろ」


そうかもしれない…


「おいそこ~、俺も混ぜろ~」


と、軽い感じできたのは私の後ろの席に座っている志連くんだった。


「…え?誰?」


「いや、ひどくね!?俺隣の席だよ!?」


「いや~、見てなくて」


亜湖がすごい押している。


「だから言ったじゃん!志連!志すに、連なる!し・れ・ん!」


「お前うるさい」


音葉くんがバサっと切り捨てた。


「うわっ、怒られた!」


なんて言っているが楽しそうだ。


「えーっと、桜宮と、音葉と、…ごめん、名字がわからない」


「いや、そっちこそ酷くないかな!?巫ですぅ~」


「あ、そうそう」


「あ、そうそう、じゃないよっ」


亜湖とか志連くんの、この壁のないところが素直にすごいと思う。


私は人見知りが過ぎて声が出ない。


「桜宮が引いてる」


「うそぉ!?」


「引いてない。人見知りだから話せない」


「あ、自分で言っちゃうんだ」


亜湖が意外、と言うふうに目を開く。


「あそうそう!そういえば、5時間目体育だってよ~!体力測定!」


体力測定、か。


「あのさあのさ!ここのジャージ可愛くない!?シンプルかつ、校章がワンポイントとして入ってるってやつ!しかも、黒と白!
シンプル・ザ・ベスト!」


亜湖は体操服のことについて語っている。


洋服とかが好きなのかな?


「美柑ちゃんとか絶対可愛いよね!?…というか、着て似合わないものとかなさそう」


「私、大体制服」


「意外!」


亜湖と、いわゆる女子トーク(?)している間に音葉くんと志連くんは別の話をしていた。


「お前意外といじりがいあるよな~!」


「ないから」


「いやいや、なんかな、変なところで抜けてんの!」


「まだ話して3分しか経ってないけど?」


「いやいや、ずっと監視してたから。特性、口癖、仕草とか?」


「普通に怖いわ!」


あそこの相性はいいのかな…?