など、私は“表の世の中“では普通の女子高校生だ。


誰にも言えない秘密が私にはある。


「お疲れ様です!総長!」


「「「「お疲れ様です!」」」」


閃光(せんこう)。


この七尾市に住んでいる、または通勤・通学をしている人なら聞いたことがあるだろう。


七尾市は治安が悪い。


私・桜宮美柑もその原因の1人だ。


「お疲れ。冷蔵庫にあるやつ、飲んでいいよ~」


「ありがとうございます、総長!」


ここは閃光、七尾市最強の“レディース”の不良組織のアジト。


見た目的にはどこにでもある古い1軒屋だが中はアジト用に仕上げられている。


代々使ってきたものらしい。


制服のままソファに座る。


「別に毎日来なくていいんだよ?」


「いえ!総長が最近お疲れのようですので」


「敬称も敬語も大丈夫だって。あなたもたった2つしたでしょ?真凜(まりん)ちゃんだって私より年上だし」


「呼びました?美柑」


真凜ちゃんこと、工藤真凜(くどう まりん)ちゃん。


私の1つ上の高校2年生。


肩まである黒い綺麗な髪を高いところでポニーテールにしている、可愛い女の子。


「ううん。大丈夫、話題に出てただけだから」


「どうですか?鳳雛は」


私の大好きないちごオレを注いだコップを持ってきてくれた。


ありがとう、と私は言う。


「うーん、親友と言うものができました」


「親友、ですか」


うん、と私は頷く。


「かっこいい男の子、いましたか?」


「隣の席なんだけど、」


「隣の席!」


真凜ちゃんが珍しく興奮している。


「すみません。話を続けてください」


「落ちた教科書拾ってくれた」


「はわ~っ、まるで少女漫画じゃないですか!」


少女漫画?


読んだことないから分からないけど…


「確かにイケメンではあったよ」


「ふふ、微笑ましいです。その子と何か進展があったら教えてくださいね」


「うーん、何もないと思うけどなぁ」


真凜ちゃんはなぜかすごくニコニコしている。


「総長~、3時間後に会議ですよ!一応準備しておいてください!」


誰かが言う。


“会議“とは2ヶ月に1度ある、七尾市ならではの催し物だ。


なんてご当地イベントみたいに言っているけどもちろんそんなものではない。


七尾市不良1位の開闢(かいびゃく)、2位の牙城(がじょう)、2位レディースの紅蓮(ぐれん)。そして我らが1位、閃光(せん

こう)だ。


順位的には開闢、牙城、閃光、紅蓮。


まあ、男子に勝てる訳もなくこうなったわけだが牙城には勝ちたい。


なんて望みが私にはあるのだ。


「今日だっけ」


「はい!今日もバレないようにしていってくださいね!鳳雛にもいるかもしれないんですから」


真凜ちゃんが、今日も担当しますよ~、と嬉しそうに言う。


なんでこんなに可愛いのに彼氏ができないのか疑問で仕方がない。


「真凜ちゃん、ありがとう」


「いいえ~」


すると、小さめのトートバックくらいの鞄を持ってきた。


このなかにメイク道具が入っているらしい。


「美柑は会議以外はメイク道具必要なさそうでよね。もとが良すぎて」


「いやいや、そんなんじゃないから」


私は背もたれのない椅子に座り、私の目の前に真凜ちゃんが来る。


「真凜ちゃんって本当に可愛いよね」


「なっ、急に美柑どうしたんですか!?」


この真凜ちゃんこそ無自覚なのである。


サラサラと綺麗で潤いのある黒髪に長いまつげ、大きな目、形の整っている唇。


同姓でも惚れるのに…


「ちょっと目を閉じてください」


そう言われてから15分後。


「完成しました!」


私は鏡を見てみる。


「別人…!?」


髪もいつの間にか結ってある。
「出発までメイクを落とさないように気をつけてくださいね」


「ありがとう」