「おはよ」


「お、おはよっ」


さて。登校中、なぜこんなに焦っているかと言うと。


視線を下に下げると、手が繋がれているからだ。


「人がいない時ぐらい、いいだろ」


「ま、まあ、いいんですけども」


久しぶりの登校ということで音葉くんが迎えに来てくれた。


「けども?」


うぐっ!


あまり触れてほしくないところを触れてくる…!


「心臓が妙に早いんですけど…、死にたくないです」


「…多分、俺といたら寿命伸びる」


なぜか説得力がある。


「音葉くん、」


そう言った途端、なぜか音葉くんは顔を顰めた。


「ど、どうしたの?」


何か気に触るようなこと言ったかな…!?


すると、音葉くんは、音葉くんより少し背が低い私に目線を合わせてこう言う。


「下の名前がいい」


「…え?」


「みんな音葉音葉って言う。彼女ぐらい下の名前で呼んでほしい…、な、美柑」


初めて、ではないけど、慣れてないもので顔は赤くなるわ暑くなるわ、心臓は早いわ、体が大変なことになっている。


「こ、琴世くん…」


「呼び捨てがいい」


「む、無理っ」


「…」


そ、そんなに悲しそうな顔をしなくても…!


一瞬そんな反論をしたが、不貞腐れた音葉…、こ、ここ、琴世くんの意地に負け。


「こ、琴世」


すると、瞬く間に笑顔になる。


「ちょっと拗ねてみたらすぐに折れたな」


「なっ、本気じゃないの!?」


ふっと笑う琴世…くん。


「普段からも呼び捨てがいい」


「う、うぐ…、頑張ります…」


すると、急にこんなことを言い出した。


「あと、10分でHR始まるんだけど…」


「いや、急ごうよっ!ほら!」


私たちは鳳雛学園に急いで向かった。



そして、久しぶりの仲間、教室に向かって私はこう言う。


「えーっと、天ヶ瀬学院から転校して来ました、桜宮美柑です」

End.