その後、電車に何分か乗って歩くと音葉家に着いた。…それは、とてつもなく綺麗だった。


特別に大きくて、目立っているわけではないけど、狭くはない。…絶対に。


「お、お邪魔します」


「固くなくていいよ。…いや、するなって言う方が難しいよな」


そう、ここは敵陣地のボス的位置でもあるのだから。


「…琴世」


奥から音葉くんの父さんが出てきたと思ったら。


「「…あれ!?」」


「…は?」


音葉くんだけ驚いている。


「あ、その、先日はありがとうございました」


お父さんが頭を下げた。


まさかの、あのおばあさんを助けた時の男性だったのだ。


「いえいえ、その、全っ然私はっ、えーっと、頭を上げてください」


「それでも…、だから季さんに似ていたのか」


あの時も言っていた季さんとは、私のお母さんだ。


「と言うことは、武尊さんですか?」


「なぜ僕の名前を…?」


「お母さんから聞きました」


「そうなんですか」


元々2人は両思いだったのだろうか。


「ここじゃなんでんすからどうぞどうぞ、上がってください」


「お邪魔します」


「…父さんのあんな腰の低い姿見たことない」


音葉くんはまたびっくりしているようだった。