1番近くて、1番遠い。

「…お前何裏切ってんだよ」


その人は、あの会議で話すような、冷たい口調でそういった。


そう、開闢総長だ。


「なんで、あんたが…!」


「さあ?」


私の考えてることなんて分かっていたのだろうか。


「コイツに丁寧に接してもらったんじゃねーの?」


「けど!私の目的は、」


「最初、聞いてた?…手を出したら息止めるよって。そっちの総長さんも言ったじゃん。男女関係ないって」


「あんたになんか息を止められたくないよっ」


すると、音葉くんの中で何かが切れたのか、麗に手をあげる。


のを、私は自身の体で受け止めた。


「麗、は、だめ」


その威力は強烈で、立っていられないほど。


まるで、全身に毒が回ったような。


「桜宮!」


音葉くんは私を正面から抱きしめた。


「ごめん。本当に」


「だ、大丈夫、だけど」


音葉くんに正面から抱きしめられるのは初めてだ。


「判断を、間違えた」


「だから、大丈夫だって」


「大丈夫だったらこんなに苦しい声は出さない」


そうなんだけど。


それ以外、何を言うことがあるの。


帰ってきた亜湖が目を見開いている。


「本当に、一回も傷つけないって決めてたのに。早速傷つけた」


その声は、本当に泣いてるような声だった。