“音葉琴世side”


「なんだこれ?」


俺はトイレの鏡を見た。


すると両耳にイヤリングがつけてあるではないか。


右耳は普通のリングイヤリングだが、左耳はゴールドの棒状だった。

これは、プレゼント…、か?


ヤバい、嬉しい。


俺のことを思ってくれたんだと思うとニヤケが止まらない。


「…おいおい、何自惚れてんだ?」


後ろから見たことある奴らが話しかけてきた。


「…特に話すことはない」


俺は面倒ごとを起こしたくなかったため、すぐに逃げた。


「あ、おいっ」


ヤバい。すぐに抱きしめたい。


あ〜っ、ほんと、桜宮がいないとダメだ、俺。


「逃げるな!」


そんな声から離れるように元の住宅街に戻ってきた。


「いつ、会えるかな」


親にバレた時のリスクを考えて連絡先を持っていない俺らに、直接会う以外の方法はない。


俺は誰に聞かれる訳でもない独り言を呟いて帰った。


まさか、涅槃と黒鶫との決闘がピンチになるとは思いもしなかった。