“桜宮美柑side”


「…で、なんでここに桜宮がいるわけ?」


「そりゃあ事情調査で」


とてもではないが特に望んだことのない背景での音葉くんとの会話。


「詳細は?」


「開闢総長がなんか蹴散らしてるみたいに聞いたので詳細をあの店の店主に聞きにいった」


「…俺でかよ」


「どうして侵略なんか始めてるの」


「俺の目標に達成するため」


「害のない人には手を出さないでね」


「俺がするように見えるか?」


「見えないけど…、一応言っておいただけ」


ん、と音葉くんが言う。


「あと涅槃と、黒鶫(くろつぐみ)ってヤツ」


涅槃…、金髪のいるところだ。


「涅槃、ほどほどにしてあげて。すっごい私情挟んでるけど」


「なんで?」


「うちの可愛い可愛い子がなんか最近よくいるの。まあ、あとは音葉くんの判断に任せるけどさ」


「ん」


そのあとは何も喋ることもなくなり、無言でいた。


と言うか、話をしていいのかすら分からなかった。


近くに寄ってきた女性も私を見るとすぐさま逃げていったし。


そしてこの繁華街と住宅街の狭間に来た。


「…じゃあ俺はまだ残ってるから」


そう言って、離れようとした音葉くんの腕を掴んだ。

「音葉くん、ちょっと来てください」


「ん?いいけど」


私は人のいないところに音葉くんを連れてきた。


「しゃがんで」


「え?」


そして、壁に寄っかかりながら座る音葉くんの両耳に今日買ったものをつけた。


「ありがと、音葉くん。またね」


私は恥ずかしいのもあり、そそくさと出ていった。