すると後ろから声が聞こえた。


何回も何回も、聞きたくて仕方なかった声。


「桜宮!?」


久しぶりに聞いたよ、その声。


私は後ろを振り向かず、驚いている目の前の顔を見る。


「桜宮って、君、」


「ごめんね、そして久しぶり、見和くん」


「本当に、本当に美柑ちゃん…!?」


「うん、美柑」


私は一息ついてこう言う。


「本当の理由を聞けて良かったと思ってるよ。私の愛想のない性格が原因だと思ってたんだけど」


「ぜ、全然そんなことないよ!」


「でも、もう今は見和くんの思ってるような私じゃないから。ただでさえこんなところにいるんだし」


「どういう…」


「桜宮」


「久しぶり」


「そんなに経ってなくね?…まあ俺は寂しかったけど」


「その横の人は、」


そう言われたので私は頭を捻る。


正式に付き合ってる訳でもなければ友達でもなく、もうクラスメートではないのだから。


「…恋人の、一個手前」


音葉くんがそう言ってくれる。


「そっか」


「今日は会えてよかったよ、誤解も解けたし。多分会うことはもうない」


「え?」


「じゃあね」


私は音葉くんと店を出た。