「どこにいるのかなぁ」


多分、徒歩だからそんなに遠くは行ってないはず。


そう思った時、ガシャン、と音がした。


振り向いてみると、車椅子に乗っているお婆さんがこけたではないか。


「だ、大丈夫ですか!?」


私は走って車椅子を立て直す。


「ありがとねぇ」


「お怪我はありませんか?」


「大丈夫よ。今どきこんな人助けを立派にできる子もいるのねぇ。うちの孫はなんか人を傷つけてるらしくて…」


なぜか長い話が始まってしまった。


「母さん!」


奥から走ってきたのはなんとも若そうな男性。


この様子だと20代後半…?


でもお母さんってことは…


「…季(すもも)さん…?」


「え?」


「あ、いや、何でもありません。それと、母を助けてくださり、ありがとうございました」


その人は綺麗にお辞儀をした。


「いえ、そんな大したことでは」


すると、その人は首を横に振る。


「すみません、これから用事があるので戻ります」


笑顔で会釈をしながら帰っていった。


と、この要件も終わったところで、麗を探さなきゃ。


そう探したけど、その日、見つかることはなかった。


ましても、この日から見つかることはなかった。