「…………っ!」


 殿下の物言いはどこかぶっきら棒だけど、真っ直ぐで嘘が無い。ささくれだった心が満たされていく。

 きっとわたしは誰かに『悪いのはおまえじゃない』って、ずっと言って欲しかったんだと思う。

 だけど、誰もわたしの気持ちなんて分かってくれなくて。
 どう思っているのか聞いてすらくれなくて。

 どうしたら良かったんだろう。
 どうしたら他の人を不幸にせず済んだんだろう。

 どうしたら――――わたしは幸せになれたんだろう。そんな風に考えて、いつも苦しかった。


「うん」


 気づいたらわたしは頷いていた。ずっと溜まっていたものが涙に形を変えて、ポロポロと止め処なく流れ落ちる。

 殿下の胸に顔を埋めながら、わたしは目を瞑った。ジャケットに染みができちゃうな、とか色々と思うことはあったけど、どうしてもそうしたくて。

 少しだけ、ほんの少しだけだけど、自分らしく生きてみたいって、そんな欲が芽生えていくのを感じながら、わたしは殿下に縋りついた。