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「いらっしゃいませー」

 それから、商店街の中を行ったり来たりして、俺達は手芸屋さんにはいった。

 中には、裁縫をするための道具や材料がたくさんそろっていて、アランは、中に入るなり、(あご)に手をあてて、真剣に考え始めた。

 カールさんとシャルロッテさんの人間界用の服を作るといっていたけど、ちゃんと雑誌とか、道行く人とか観察しながら、今の人間界の流行とか、しっかり研究したらしい。

 その上で、服をデザインして、もう型紙まで作ってるとか。

「うーん……これ、ちょっと生地が厚いかな」

「え? そうか?」

「うん、この厚さだと、闘う時、動きにくそう」

 戦うことを見越して、服を作るアラン。
 
 スゲーな。でも、そのおかげで、シャルロッテさんたち、あんなヒラヒラの服着てても、あんなに身軽なのか?

「ハヤトも、ララちゃんに服作るんでしょ?」
「あ、うん」

 そうだ、俺も選ばないと!

 とりあえず、貯金箱から、三千円は持ってきた。いつも生地を買うのは、100円ショップばかりだけど、手芸屋さんには比べ物にならないくらい、たくさんの布があって、ララに似合う物が見つかればいいななんて思いながら、店内を歩き回る。


(……うーん、こんな感じかな)

 それから、暫くして、俺は布を決めた。
 ララの言っていた青と水色の生地。

 人形用の服だから、そんなに大きな布じゃなくてもいいし、思ったよりお金も余りそう。

「ハヤト、アレ可愛い!」
「わ、ララ!?」

 すると、いきなり腕輪の中から人形のララが出てきた。

 この前、シャルロッテさんが来た時に、中から出る方法を教えてもらったらしいんだけど……

「ララ。勝手に出てくるな、バレたらどうすんだ」

「えー、でも、ララも見たいー」

「うーん……じゃぁ、俺のポケットの中にいて。あと、絶対しゃべらないこと」

「は~い」

 丁度死角で人がいなかったし、人形の姿だったから周りにはバレなかったけど、正直、これには、ひやひやさせられてばかりだ。

 俺は、こそっとぬいぐるみのララを上着のポケットの中に入れると、さっきララが、可愛いといったワゴンの中に目を向けた。

 そこには、アクセサリーを作るキットが、たくさん入っていた。

 ヘアピンとか、ネックレスとか、ピアスとか、女の子が好きそうな可愛くてオシャレなデザインのもの。

(あ、確かに可愛い)

 手に取ってみれば、その小さな袋の中には、アクセサリーを作るのに必要な材料が全部入ってるみたいだった。

 そして、それを見て、急に、花村さんのことを思い出した。

(花村さん、前髪あげたいって言ってたけど……)

 ふと目についたヘアピンは、花村さんにすごく似合いそうだなと思った。

 青くて綺麗なペアピン。
 これにリボンとか付けてアレンジしたら、もっと可愛くなりそう。でも……

(前髪あげるの怖いとも、言ってたし)

 何を考えてるんだろう。
 こんなこと考えても、どうにもできないのに。

 何より花村さんは、あの時の記憶を全部わすてるから、俺が、裁縫が趣味だってことも知らない。

「ハヤト!」
「……!」

 すると、アランが横から声をかけてきて、俺は顔を上げた。

「それ、アヤメって子へのプレゼント?」

「へ?」