私が『実は魔王』のノワール・ブラン先生と音楽室に入ると、ヒロインと攻略対象者達が集まっていた。
でもその様子は私が見たところ、今までヒロインが思い描いていたであろう甘いものではない……みたいね。


「これはどういう集まりなんだ?」

先ずはノワールがらしくもなく、教師っぽく言うから、ちょっと笑えた。
自称ヒロインを皆でいたぶる為に集まってるのだと、わかってるくせにね。

私ひとりでも彼等を止められるだろうとは思っていたけれど、念の為ノワールに頼んで、付いてきて貰ったのだ。
今までのこの部屋の皆の言動を、ノワールは画像(音声付き)で見せてくれていて、アンドレがヒロインに手をかけたのを確認したから突入した。

密室の中では誰かのタガが外れると、それに同調する者が出てくる。
そしてそれは全員に広がってしまう。
特に義弟のジュールは長年暴力に晒されてきたから、割りとそれを普通に思っているところがあって、彼がヒロインに手を出すのを恐れたからだ。
このゲームはR18だから、どんな暴力性をジュールが見せるか、想像つかない。

アンドレは気が弱いから、それほど心配していないけれど、ジュールとシャルルはどちらも闇抱えてそうなところで波長が合うようで、このふたりが揃っていると不穏この上ない。


そういう訳で私がここへ来たのは彼等が暴走するのを止める為だから、ヒロインを助けるのは二の次にしてたけど、ごめんね?