「娘を使って、機密を手に入れて?」

「それじゃスパイ、って事なんだ?」

「取り敢えず娘を牢に入れて痛め付けて吐かせて、商会長呼び出すか」

「痛め付けるのは僕は得意です!」

「ジュール、胸を張って自慢しないで。
 国家反逆罪なら、一族郎党、全店舗従業員家族、まとめて処刑……」

会話に参加していないアンドレがあたしの後ろに回って、腕を捻る。
本人的にはごく軽く捻ってるんだろうけど、痛いって!


「ちょ、ちょっと、待ってよ!
 何言ってんの?
 痛め付けて吐かせる?
 まともじゃないよ!
 スパイって? 国家反逆罪?
 違う、違う!じ、冗談じゃないわよ!
 それこそ、冤罪でしょ!」

「……」

あたしが必死で訴えてるのに、誰も返事してくれない!
あたしの話を聞けよ!
あたしはあんた達を攻略する為に近付いただけだよ!
あんた達の心に寄り添って、悩みやら苦しみから助けて、好感度を上げていく、それがこのゲームのルールだから、そうしただけじゃん!


そう、ぶっちゃけたいのに、絶対に信じて貰えないのはわかってて……
このまま拷問処刑エンドだけは、やだっ!
どうしたらいいのっ!



その時、音楽室の扉がノックされて、エイドリアンが誰かを確認して……
訪ねてきた人物は、彼が押さえかけた扉を無理矢理に開いた。


「ひとりの女の子を、男性何人で苛めているの?」

現れたのは魔王を引き連れた悪役令嬢だった。