「ご、ごめんなさい!
 これからは王太子殿下とお呼びします!」


あわてて謝罪するあたしに。
綺麗な顔したリシャールが思い切り冷たい顔を見せるのは……
本当は怖いんだけど、やはり推しが目を見て話しかけてくれるのが嬉しいし、何ならこっちのちょっと黒い王太子殿下はあたしの弱々なところにグサグサに刺さってくるものがあって、
『リシャール、かっこいいよぉ』ってなってる。


「クロエが君の教科書を破った?
 それにいつ気が付いた?」 

理由は何でなのかわからないけど、もう嘘だって確信してるみたい。
こんな状況で信じて貰えないかも知れないけど、仕方なく答える。


「登校してきたら、ゴミ箱に破かれた教科書が捨てられてて……」

「と言うことは、君は教室に教科書を置いて下校している、ってこと?」

あたしはリシャールの確認に頷いた。
本当は教室で皆が帰るのを待って、自分で破いたんだけど。


「それは校則違反、って知らない?
 置き勉は禁止にしている。
 だから、放課後に君の教室に入って、君が置いて帰った教科書を破くような苛めを、クロエがする筈ないんだけど?」


置き勉、って言葉をリシャールが口にするのが、日本のアプリゲームな感じだけど、置き勉禁止が校則?
そんなの知らない!
あたし以外は皆知ってること?