しかし、伯爵令嬢とふたりきりにしろと命じられたのは初めての事なので、どうするか悩みどころであった。
ミレーユ嬢とは『恋人ごっこ』のような関係で終わると思っていた。
私達の視界内にいつもふたりは居たのだ。

この逢瀬が最初で最後の一回だとしたら?


バルモン伯爵令嬢のバックグラウンドは既に調べは付いていた。
怪しい繋がりは見当たらない家門であったし、ミレーユ嬢は一人娘であったので、婿を取って伯爵家を継ぐ身だ。
将来的に殿下に嫁いで……にはならないと、思えた。
ただ、中等部の間だけの恋人。
どうせ翌年には殿下は高等部へ進級する。
離れてしまえば、殿下もご自分の立場を考えて冷めていく関係だろう。


結局、私達はこれきりなら黙っていることに落ち着いた。
次、同様にふたりだけにしろと言われたら、直ぐに報告。
それで決まりだ。


殿下と伯爵令嬢のふたりで放課後まで過ごすのなら。
それまでは私はゆっくりさせて貰おう。
そう思って、図書室へ行く事にした。
すると、そこに思わぬ人物が居た。