中等学校を中途退学したことや高等学校へ進学しなかったことは後悔していない。
我が家の経済状況では無理だった。
だが意外にも、2度目の学生生活は楽しくて。 
実年齢で田舎の中等学校に通学していた頃は、苦痛しかなかった授業が面白くて。

特に外国語だ。
化学や数学は大して思わなかったが、語学は騎士の仕事に必要な気がした。

翌年の高等部の授業選択も当然、リシャール殿下に合わせるのだが、外国語は3ヶ国語有る内、殿下と私の希望する語学は違っていた。
勿論、そんなことは決して口にはしないので、殿下は御存じなかった。



中等部の3年生になると、殿下は勝手なことを始めた。
王命で結ばれた婚約者がいらっしゃったのに。
血迷ったというのか、1学年下のミレーユ・オリヴィエ・バルモン伯爵令嬢と恋仲になられてしまった。
そして、ある日の朝私にこう言った。


「今日は午後から俺に付くな」と。


いつも側に付いていたフランソワ侯爵令息も、午後から付くなと言われて、苦々しい顔をしていた。
この事を午後までに王妃陛下にご報告するべきか、ふたりで相談した。
学生のフランソワ様はともかく、私は王家に雇われている身だ。
主はリシャール殿下ではない。
私を抜擢してくださった王妃陛下に報告をしないのは、どうなのか?