学院長から私のお世話を頼まれたくせに、リシャールってば。

初対面では、蕩けそうに甘い顔で、私に向かってにっこりしたのよ?


「私が生徒会長のリシャール・ルブランです」

あたしの! 下半身直撃のその声は!
大好きな声優さんの美声だった。
これからこの声が、あたしのものになって、どんな甘い言葉を囁くのかと思ったら。
やだ、もぉイッちゃう。
……だったのに!


それに自己紹介はあくまで、生徒会長、だって。
この国の王太子だって、言わないの、たまんなかった。
同じ学院生だよ、って言ってくれたんだよね?
王族だからといっても、遠慮しないでね、だよね?
だったら、あたしは遠慮しない。
……だったのに!


「BB、と書いて、ベベ、って呼んでくださいねっ!」

そう、にっこり笑って言っただけなのよ?
ちょっと勝手に腕は触ったけどさ……
その瞬間だった。

リシャールの背後に居た護衛騎士のアンドレがあたしの手を叩いたの。
パシッ!って。

音ほど痛みはなかったけれど、ビックリして。
自然に涙が出たの。
へ、アンドレどうして? って。