シャルル殿下と、あの迷惑女のビグローについて話す。
生徒会室には俺達ふたりだけ。
クロエ嬢はまだだった。


シャルル殿下から噂でクロエ嬢が傷付いているだろと、言われて……
胸がぎゅっとした。


俺は俺に振り向いてくれない君を。
お前には無関係だと、俺を突き放した王太子殿下を。
無意識に傷付けたかったのかもと、今更ながらに思い知らされたからだ。


3年前、主であるリシャール殿下に命じられた一言が忘れられない。

『俺達の……クロエの事には、口も手も出すな』


あの頃、中等部3年生の殿下は婚約者への想いと、良く出来た彼女への劣等感でぐちゃぐちゃになっていて、あろうことか、婚約者に向かって、
『本当に好きな人と、恋をしたい』なんて、バカな事を言い出した。

第1王子に対する閨教育の座学も始まっていて、周囲から見たら、本当はクロエ嬢の事が好きなのに、思春期男子特有の羞恥心と劣情と愛情と何だかんだ縺れて、素直に対応出来なかったのだろう。

対するクロエ嬢は、殿下より精神年齢は5歳くらい年上で、そう言われても平気なように見えた。 

それでまた、殿下は傷付いた。
でも、それは平気なように見えただけで、彼女は平気じゃなかった、当然だけど。