君にかける魔法

「ふぅ…」

飲み物を飲んでナツキは落ち着いてきた。
ここまで苦手だったとは…
あんなに部活では回ったり、跳ねたりしているのに三半規管が弱かったみたい。

「ターンはなるべく前向いてれば目回らないし、人工的に上に行くのとは訳が違うからねー」
「ま、そうだよね」

休憩用の椅子に座りながら、ゆったりと園内を見渡す。

「違う国に来たみたい」
「確かに」

平日なのに人が多いなぁ、なんて呑気なことを考える。

「あのさ…」
突然深刻そうにナツキが話し出す。

「昨日は、ごめん。」
その一言で私の脳裏には、昨日の光景が一瞬で思い出される。

「いや、気にしてないよ」

気にはする。
でも忘れていた。
朝の様子だと、普通だったし。
ちゃんとナツキも覚えていたんだ。

「私、どうかしてた。…彼氏いなくなったし、欲求不満だったのかなー」
「そんな、寂しいこと言わないでよ」

でも好きな人と別れたら…

青葉さんと別れたら…


私そんな気持ちになる?


(私、そこまで思ってないのかな。)


少し変な感じがする。
私を好きでいてくれる人。
勿論、大切にしたい人。

でも、いなくなったら。
私はナツキみたいに考えるのかな。