君にかける魔法

バイトに入った時期は青葉さんが1年くらい早かった。
仕事もできるし、お客さんと仲良くなるし、尊敬できる先輩だ。

「ソノさ、この日シフト?」
「あ、」

アイスを食べ終わった青葉さん(食べるのはやっ)がカレンダー画面の日にちを指さす。
「友達が彼氏と花火大会行くって言ってて、いろいろ準備お手伝いするんです」
「ソノは行かないの?」
「そうですね」

"今年は専属ヘアメイク"

って思っていたし、準備も予定を立てることも何もしていない。


「嫌じゃなきゃ、僕と行かない?」


子犬のような可愛らしい、その中にも男らしさがある目でこちらを見る。
「嫌だったらいいんだけど、」

「…いっ、ても、良い、んですか?」

口が上手く回らなかった。

「うん。時間何時にしようか」

花火。
男の人と花火。

恋愛体制が無さすぎる私は、一気に体温が上がってくるのを感じる。
いや、今日暑いからじゃ…

「ソノ、暑いの?」
「いや、そういうわけじゃ」
私の頬に青葉さんの手がそっと触れた。
多分、余計に顔赤くなってる……
「…ふはっ、かわいいんだね、ソノは」
「かわいくないですっ」

なんだろ。
この感じ。
現実?2次元?何次元?

自分が自分じゃないみたいな反応をしてしまったことへの恥ずかしい。