君にかける魔法

その後のバイトは何事もなく終わった。

ただ心の中に自分がまだ知らない感情、
名前のない感情が生まれていたことは確かだだった。

『さっきはごめんね!日曜楽しもうね!』

泣いていたことが嘘のようなLIN○。
ナツキちゃんはこうやって仮面を被っていたのかな。
好きな人の前でも?
よく分からない自分の感情と、ナツキちゃんに対して疑問が残った。



「ミコ。」
「どうしたのお姉ちゃん?」
「好きな人今いる?」
「…え、お姉ちゃん好きな人?」
「私じゃなくて、」
家に帰って一通り身の回りの事を済ませ、ミコの部屋に行った。
あの時の泣き顔を見せないようにしていた、苦しそうなナツキちゃんが少し引っかかっていたから。
ミコは私と違って人から好かれるし、何か聞き出して、ナツキちゃんの為になりたいな…

「…そっか。…その子は自分の気持ち伝えてるのかな。」
「自分の、気持ち…」
「泣くくらい彼氏さんのこと、好きなんでしょ?」
「そうみたい。」
「お姉ちゃんが出来ることは背中を押してあげること。くらいしかないと思うよ。他人の間に勝手に入り込むのは良い事じゃないよ。」
私が背中を押す…

「お姉ちゃんこそ、そんな人いないの?」
ニヤッとした表情でミコは私の顔をじっと見てくる。
この小悪魔な感じが、男子は好きなのだろう。
「私はないない。」
「お姉ちゃんにそんな人が出来たら、いつか私に紹介してね!」
「はいはい、おやすみ、ありがとねー」