君にかける魔法

ナツキちゃんの顔が赤くなる。
本当のこと言っただけなのに?
見た目も中身も良いナツキちゃんだから、私の一言に動揺するとは思わなかった。

「かわいいなんて、…セイヤも言ってくれないのに…照れるわぁ」

私に顔を見せないように少し横をむく。

「きっと言われたいよね。好きな人…なんだからね」
押さえていた肩が少し震える。

「ナツキちゃん!?」

その場にしゃがみこむ。
2人で近くにあったベンチに座る。

「知り合ってこんなすぐに泣くなんて、ヤバいやつでしょ、私。」
「…そんなこと」

普段は憧れられる存在、先生からも慕われる優等生って感じのナツキちゃんが別人みたいだった。
『バイト少し遅れます。』
ナツキちゃんが俯いている間にこっそり店長にLIN○した。

「私、嫌われてんのかなぁ……」
下を向いたまま、泣き続ける。
今は何も聞かない。
彼女のそばにいよう。
ナツキちゃんが私にもたれ掛かる。
今にもどこかに消えてしまいそうな、いなくなってしまいそうな、不思議な彼女の肩をキュッと抱きかかえた。
「えっ…」
空いていた右手でナツキちゃんの左手をきゅっとにぎった。

「言いたくなかったら言わなくていいんだよ。」


恋を知らない私にはあなたの気持ちは分からないかもしれない。
でも放っては置けないから。
こんな平凡な私の日常に変化を加えくれたあなただから。
今はそばにいようと思った。