君にかける魔法

「これが私の気持ち。私はこれ以上望まない。…ナツキも正直になって。」


"正直になって"


私も伝えていいのかな…

1人残された部室で、浮かんでくるのは…


私に魔法をかけてくれた、魔法使い。


決めた。

私はあなたに思いを伝える。



そう決めたのに、なかなか伝えられない。

好き。大好き。

その気持ちがどんどん大きくなると同時に、私は気持ちとは逆の行動をしてしまうようになった。

学園祭の時のあの男の人は、予想通りモモの彼氏だった。
クルミは知っていたのに、私は知らなかった。
私は頼りにされていなかったのかな。

どんどんクズな人間になっていくのが分かったのに、それに追い打ちをかけるようなことが起こる。


見たくなかった。
彼氏と2人で歩くモモだった。
私に気づいたようで、いつものように優しく可愛い表情で駆けてくる。

嫌だ。


嫌だっ!!


モモが私の前に立ちはだかる。

走ればモモなんて追いつけないはず。
図々しすぎるよね。

話したくないのに、話したい。
顔を見たくないのに、顔を見てあなたと…

私は目を合わせない。

「何。」

自分でも驚くくらい低い声だった。