君にかける魔法


「そんなに自分を責めないでよ、頑張ったね…」

私に慰めの言葉をかけ、後ろから抱きしめられた。
その手が少し強くなる。

私が好きなのはあなたなのに……






私は嫉妬した。
あなたに彼氏が出来たと悟ったの。

学園祭の2日目。
部活のことも重なり、私のメンタルは訳わかんなくなっていた。
でもせっかくだしモモと楽しみたかった。
明るいフリして、いつも通りを装ってでも、一緒の時間を過ごしたかったのに…


誰?


少し緊張したような顔を見せる。
私には見せない顔。

悔しい。


「…もぉ、そういうことなら言ってくれればいいのに!ほら、2人で楽しんで」


もう見たくない。

私はこの言葉だけ言って逃げた。

無理っ。

無理なのに、実はこっそりついて行ってみたんだ。


私は見てしまった。

見たくなんてなかった。


2人のキス。

うさぎのカチューシャをつけたあなたはいつもより特別感が増して可愛いのに、それを誰かのものにされてしまうなんて。

自分がこんなに嫉妬深く、欲深い人なんて知られたくない。
なんて下劣な人間なんだろう。


好き。

伝えるのが怖い。



その日、私はクルミにキスをされた。
クルミが持つ感情は、私がモモに持つ感情と一緒だった。

言葉をかわさなくても分かってしまった。

『あなたが好き』

それを思い語るような口づけだった。