「点検終了。異常なし」
満足そうにちょっとだけ口角を上げた柿崎さんが、すっと立ちあがる。
28歳とは思えない、極度の落ち着きぶり。
完璧主義者だし、見習うところがたくさんあるなぁ。
「琉希様、昨晩はよく眠れましたか?」
またその話?
「子供の頃の眠れない俺の記憶は、そろそろ消してよ。最近は、ちゃんと寝むれているよ」
それもこれも、海花のおかげだけど。
ポメラニアン姿の俺を、ナデナデして寝かしつけてくれるから。
「琉希様は一人で抱え込むタイプですから。他人のことよりも、自分のことを一番大事にしてください」
柿崎さんが、眼鏡を指でクイッと上げた。
厳しめ発言は、俺のことが心配だからこそ。



