俺は月見家の跡取り。
だからかな?
幼稚園児なのに、変なプライドばっかり高かった。
いじめられているなんて、親に言いたくなくて、バレたくなくて。
そんな俺を、唯一わかってくれていたのが海花。
メイドの娘で、俺と同い年で、いわば幼なじみ。
通っていた幼稚園も一緒。
誰にでもおっとり笑顔を向ける、ホワワンとした気弱な女の子。
行動力なし系に見えるのに。
俺がイジメられていると、海花はいじめっ子に微笑みかけに来る。
「琉希君はね、とっても優しいんだよ」
「耳としっぽがあるけど、私たちと一緒なんだよ」って。
お花みたいにふんわり笑いながら。
「今度一緒に、公園で遊ぼうよ。琉希君ね、お砂のトンネル作るのとっても上手なの。水がブワッってなってね、それでね、本当にすごいんだよ」
俺が友達の輪の中に入れるように、声掛けをしてくれていたんだろうな。
ほんわか笑顔で、俺の良さをみんなに伝えて回ったりもしてくれていたけれど……
そんな海花がうっとうしくて、きつい言葉を浴びせる人もいた。
「ブス海花」
「もう幼稚園に来るな」
海花は怒鳴られたり、時に園カバンを投げつけられたり。



