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この世には、人間以外に『犬族の獣人』がいる。
でも犬獣人は、めったにお目にかかれない。
『わんこ獣人を生で見た人には、幸せが訪れる』
そんな都市伝説があるほど。
希少価値の高い絶滅危惧種。
俺が幼稚園の頃は、家族以外の犬獣人なんて見たことがなくて。
今みたいにテレビで活躍する犬獣人すらいなかった。
人の姿でいようと頑張っても、すぐに耳としっぽが出てしまっていた幼稚園の頃の俺。
園の友達に不気味がられていた。
気持ち悪い妖怪やバケモノだって。
辛かったよ。
友達からわかりやすく拒絶されていたこと。
「給食じゃなく、骨を食べろや」
「牛乳はぺろぺろ舐めて飲むんだろ?」って、冷かされたりもして。
なんで俺だけ、普通じゃないの?
俺だって人間に生まれたかったのに。
俺は自分の血を呪って、海花以外の友達には笑顔を見せずに生きていたんだ。



