「そのジャンちゃんが可愛くて。その時、動画を見せてもらっていたんですよ。美記ちゃんが猫じゃらしを振ると、ジャンちゃんが体を縮めて、お尻をフリフリってさせるんです。そして猫じゃらしに飛びついて。美記ちゃんの手までガブガブ噛みまくっていて、本当に可愛すぎで」
そうですか。
海花の心を占拠したのは、猫ですか。
ちょっとジェラシーが……メラメラメラ……
「猫って、ちょっと乱暴なところがあるよね?」
「可愛さと凶暴さのギャップが可愛くて。私、飼ってみたくなっちゃいました」
海花が笑っている。
ものすごく楽しそうに。
真っ白な歯を見せながらニコニコって。
猫特有の、可愛さと凶暴さのギャップが可愛い?
どうせ俺は犬の獣人ですよ。
真っ白なポメラニアン系。
凶暴さなんて、持ち合わせていないし。
あれ?
もしや俺は……
飼いたい動物ランキングで人気を二分する、あの宿敵の猫に負けた??
痛い。かなり痛い。
俺の心臓が……
心臓に手を当てる俺。
猫より勝っているとうぬぼれ続けていた自分に、がっかり。
海花が憧れる王子様になるため、俺は努力を重ねてきたつもりだった。
でも間違った努力を、積んでいたのかもしれない。
海花が求める王子には、凶暴要素がある魔王系も混ぜ込まなければいけなかったのか!



