学校が終わると、俺はいつも習い事をいくつも回る。

月見財閥の跡取りは忙しい。


塾以外にもピアノや作法、パソコンにスポーツクラブに経営学……


家に帰ってお風呂に入り、宿題を済ませ、生徒会のこともやって。

俺に相談に来てくれた生徒に、なんてアドバイスを送ればいいか考えて……


そんなことをしているうちに、あっという間に来てしまう。

大好きな子を独占できる、たった15分の宝物タイムが。



本当は耳もしっぽもしまい込んで、完全人間の姿で海花(うみか)を招きたい。


その方が海花の憧れる、凛とした王子様でいられるから。

耳としっぽが出ている王子様なんて、可愛いを通り越して頼りなさすぎでしょ?


でももう諦めました。

だって出てしまうんだ。


大好きな海花を意識しすぎると。

耳としっぽがひょこひょこって。

だから俺はわんこ獣人の姿で、毎晩、海花が来るのを待っている。