「違う違う。ユラっちこそ勘違いしないでよね。今、キュキュキュキュキュンって、好きになっちゃったの」


「俺を?」


「だってさ無気力男子が、好きな子の幸せを願って身を引いたんだよ。そんな不器用な優しさを見せられたら、好きになっちゃうに決まってるじゃん!」


「……っ、すすす…好きとか……簡単に口にするなよな……」


「ユラっち照れてる? 顔見せて」


「バカっ! 勝手に俺の前髪に触るな!」



大きなうちわで、ゆらが真っ赤になった顔を隠している。

綾芽はうちわを奪い取って、ゆらの長い前髪を耳にかけて、ニヒヒヒヒ。



「やっぱり私、ユラっちを射止めちゃおうっと」



恋に奥手の無気力王子様と、ぐいぐい来る犬獣人のお姫様。


案外、似合いかもしれませんね。