「なんで俺まで? 立ってるだけでダルいんだけど」



長い前髪で目を隠しているのは、相変わらず。

全くうちわを振ろうとしない。

これには綾芽もあきれ顔。



「悲しみを吹き飛ばすには、大騒ぎするのが一番でしょ? ほら、ユラっちの中から失恋の痛みを追い出すよ!」


「はぁ? 意味わかんないし」


「海花のこと、好きだったくせに」


「勝手に勘違いしないで」


「海花いい子だもんね。可愛いし、素直だし、たまにぬけてるし。ホワワンとした癒し系だし。好きになっちゃう気持ちわかるなぁ~」


「ウザいウザい。俺にしっぽをこすりつけないで」


「じゃあ一つだけ教えて。なんで海花に、告白しなかったの?」


「……」