「綾芽と刃物を持った男との会話、私はちゃんとこの耳で聞いた。犬の姿で、つつじの茂みに隠れてな」
――イジメ現場を、月見家当主に見られていた。
その恐ろしい事実を知り、綾芽さんの顔がどんどん紫色に変わっていく。
「えっと……あの……」
「子孫が月見家の跡取りとして立派に成長するかどうか。親が犬族の純血かどうかなんて、関係なかったんだ。その子を育てる父と母の愛情の与え方次第だと、今日気づかされた」
「私は子供が大好きですよ。琉希君と私の子を、ちゃんと言うことを聞くいい子に育てます。私はしっかりと子供の面倒を見る、素敵なお母さんになりますから。お義父様、私をもう一度、私を琉希君の婚約者にしてください! お願いします!」



