ご主人……様……ですか……
私はいつから、綾芽さんのメイドになったのでしょうか?
悔しいです。
言い訳をしたいです。
反論をしたいです。
ですが、ここは我慢するしかないですよね?
だって未来の月見財閥婦人に歯向かったら、執事とメイドとして働いている父と母が、月見家から追い出されてしまいますから。
私は頭を下げる。
わめきながら、私に罵声を浴びせ続ける綾芽さんに向かって。
深々と。丁寧に。
「もうしわけ……ありませんでした……」
あの男性がナイフを振りかざすよりも前に、外に追い出すべきでした。
でも……
怖かったんです、私も。
綾芽さんを抱きしめて守るのが、精一杯で……



