「アハハ……そういうことか」
拓真さんが笑っている。
「オマエも被害者だったんだな、綾芽」
なぜか瞳の奥を、不気味に濁らせながら。
「好き同士が結ばれない。そんな世の中なんてクソだ。生きる価値もない。だから綾芽、俺と二人だけになれる場所に行こう」
さわやかな笑顔を浮かべた拓真さんが、私たちの方に手を差し出した。
私の後ろに隠れる綾芽さんは、拒むように顔を横に振っている。
「なぜだ。なぜ俺の手を取らない!」
「私は琉希君と婚約したの。もう拓真とは、一緒になれないの」
「大丈夫だ。俺が綾芽と過ごす場所は、この世界ではないから」
「えっ?」



