「あっ、ごめんね。人間の海花ちゃんは、しっぽなんてなかったね。私たちがラブラブ過ぎちゃうのは、獣の血がお互いを求めあうからだと思うんだ。絶対に運命の相手。何があっても切れない赤い糸で結ばれてるとしか思えない。だって昨日の夜も琉希君はね、私のことをぎゅっと抱きしめながらね……」
まだ耐性ついていない、大好きな人のラブラブ話。
私は、耳をふさぎたくてたまらない。
「あのっ……私……」
ちょっとお手洗いに……
そう言って逃げ出そうと思ったのに、私は恐怖で足が震えだしてしまいました。
だって。
だって、だって。
ドレス姿の綾芽さんの後ろに、20歳くらいのスーツ姿の男性が立っていて。
茶色の耳とフサフサなしっぽを、不気味に揺らしながら
「騒ぐな。叫んだら刺す」
綾芽さんの背中に、ナイフの先端を当てているから。



