私の脳裏に蘇る、綾芽さんの不気味な笑み。


『琉希君の前から完全に消えてよ。目障りだから』


私は急に怖くなり、歩みが止まってしまいました。



ミルキー様にはもう、婚約者がいるんです。

身の程をわきまえなくては。




ドアに立つミルキー様と、青ざめた表情で立ち尽くす私。

私たちの距離は、10メートルほど。


ミルキー様に近づきたいのに

おそばに行きたいのに

ミルキー様のテリトリーに入る権利を、私は持っていない。



その時、ミルキー様の腕に美少女が絡みついた。



くっきり波打つ肩上まで伸びた髪と、真っ白でフサフサなしっぽを、キュートに揺らしながら


「るきく~ん。一緒に帰ろう~」


甘々な猫なで声を奏で、ミルキー様を上目遣いで見つめている。



ミルキー様は優雅に微笑みながら、自分に絡まる綾芽さんの腕をほどいた。