恐る恐る、開いた紙切れ。
ありえないほど震える指先で、そっと文面をなぞる。





アミへ

高校卒業おめでとう
2年間俺とたくさん関わってくれてありがとう
俺は大学を卒業して、引越します
いろいろと気持ちを乱してしまってごめんね
これからも応援してるけど、
俺のことはもう、思い出しちゃだめだよ

元気でね

高村優





熱い雫が頬を伝う。書かれている文字が歪む。
堪らず紙切れの端にひとつ、ぽとりと落ちる。


ユウが、いなくなってしまった。


まだ喧嘩したままなのに、まだごめんねも、ありがとうも言えてないのに。
それなのにあなたは、私にこんな紙切れだけを残して、いなくなってしまった。



拭っても拭っても、溢れる涙は止まらない。
結局何も言えてない、結局何も聴いてない。
やり場のない怒りと悲しみが、深く私を飲み込んでいく。



『……なんでよ、ユウのバカ、』



嫌いだ、こんなあなたは。
だけどたまらなく会いたい、そんなあなたに。


ふたりの時間は戻ってこない。
私たちの日々は、唐突に終わりを告げた。


乱暴にもう一度、目元を手で擦る。
ふと見上げた空は、今日も茜色だった。