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『もういいから、ひとりにしてよ!!』



ある水曜の午後10時。
私の怒りは最高潮に達し、止める母親の甲高い声を振り切り、またしても家から逃げ出した。


ほんとに、なんで嫌なことって続くんだろ。


クラスメートとつまらないことで小競り合いをした今日、私の心はかなり荒んでいた。
そんな中、帰宅した途端に母親からの干渉。さすがに我慢ができなくて。



外の壁に体を預け、息を吐く。
なんとなくユウのことを考えるけど、期待はしていなかった。


少し歩こうかな。そう思って、ふらふらと外階段に足を向ける。
するとその時、慌てたようにとなりの家のドアが開いた。



「アミ、どこ行くの」



近所迷惑とか、気にしてんのかな。ユウの声は本当に小さくて、だけどその中に心配の色が滲んでいて、思わず泣きそうになる。
奥歯をぎゅっと噛み締めて、やっと振り向いた。



『………目の前のコンビニ』

「それなら俺も行くよ」



そう言って、あたふたとスニーカーを履いて出てくるユウ。
小さな折り財布をジーンズのポケットに突っ込みながら、私に近寄る。



「俺もちょっと買うものあるから。一緒に行こう」

『………わかった』

「でもタイミングいいねアミ。本当にちょうど良かったよ」



アパートのすぐ前、通りの反対側にあるコンビニ。
私は少しだけ母親のことを気にしながら、ユウとふたりでこのアパートを抜け出した。