喉が焼かれるような熱気。

取り囲む炎。


そんな辺り一面火の海の中で響く――あの声。


「…姫!姫っ!」


見上げると、わたしを庇うようにして立つ…だれかの背中。


黒髪に近い濃紺の短髪。

秘色(ひそく)色の着物に、錆浅葱(さびあさぎ)色の袴をはいた男の子。


ここがどこなのか。

この男の子がだれなのかは…わからない。


でも、1つだけ言えることがある。

それは、この場面で終わるということ。


…その先がどうなるのか。

続きが気になるけれど、それは知ることはできない。


なぜなら、――これは夢だから。



ゆっくりと目を開ける。


スズメが戯れる声。

カーテンの隙間から差し込む太陽の光。


いつもと変わらない朝の始まり。


「またあの夢…」


わたしはむくっとベッドから体を起こす。