涙でぐちゃぐちゃになった私の顔を、病院のパジャマの袖で少し乱雑に拭いてくれた。涙で滲んでいた視界が少し鮮明に見える。涙を拭われた瞳に、柔らかな笑みを浮かべる彼が映った。


「キスしよっか」


「・・・えっと?」


「ん?・・・ダメ?」


「え、話聞いてた?どっちの呪いが真実か分からないんだよ?鬼の子の呪いで、死ぬかもしれないってことだよ?」


「ああ、元々そのつもりだったし」


「へ?」


「病気に殺されるなら、茜に殺されたいんだよ」


「私は・・・・・・怖いよ、怖くて仕方ないよ」


「・・・・・・」


「自分のせいで、綱くん死んでしまったら、自分を殺したくなってしまう。好きな人を殺してしまうかもしれないのに、私には出来ないよ」


「俺はどうせ、病気で死ぬんだよ?もう長くないことくらい自分でも分かる」


「・・・っ」


「最後のお願い聞いてくれよ」


「・・・・・・」


「俺にキスしてよ」


私の体は金縛りにあったみたいに動かない。
自分の中で格闘が続いている。

どうしたらいいのか、何が正解なのか、誰も教えてくれない答えを探して、何度も頭の中で問いかけた。