自然に腕を引き寄せ、胸に抱いていた。

 伝わってくる感覚がもっと強くなる。

 目をいつの間にか閉じていた沙也。

 そのとき、耳をなにかがくすぐった。

 それは、声のようだった。

 でもどんな言葉を乗せているのかわからない。

 沙也はそっと顔を上げた。

 卵を抱えたまま、あたりを見回す。

 しかし声を発している人物や、あるいは動物などは見えない。

 なんだろう。

 私を呼んでいるかと思ったのに。

 伝えたいという響きのような気がしたのに……。

 不思議に思っていた、とき。

 不意に、ぽやっと視界が霞んだ。

 まるで貧血を起こして倒れた、あのときのような霞み方だったけれど、今度の色は黒ではなかった。

 白だ。

 優しい霧のように霞んだ視界は、ふわふわっと一瞬で違うところへ浮かんでいって……。

 ぱちり、と沙也の目を開けさせた。