幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

「沙也! 医務室に行こう! 私、すぐ電話するから!」

 また奇妙に遠くで声がして、強い力が沙也の体を引き寄せて、なにかに寄りかからせてくれた。

 倒れそうだったところには有難く、沙也はぐったりとそのなにか……ロッカールームの椅子だったが、体を預けた。

 はぁはぁと呼吸も荒くなる。

 心臓がバクバクしているのも自覚した。

 倒れる原因になった思考はあるけれど、今は考えないほうがいいことくらいはわかる。

 沙也は意識して、そのことを頭の隅に追いやった。

 今は意識を途切れさせずにいるのに集中する。

 沙也が朦朧としているうちに、ロッカールームのドアが開き、バタバタとひとが入ってきた。

 それすら沙也には、ぼんやりとしか理解できなかったけれど。

「大丈夫だよ。医務室で診てもらおう」

 いつの間にか、担架などが用意されて、乗せられていた。

 横たわれて、少しほっとした沙也。

 その手を明依が、きゅっと握ってくれた。

 包まれた手から伝わるあたたかさに、沙也は心から安心できて、目を閉じた。

 この安心から、少し気持ちは落ち着いてくれたようだった。

 くらくらするのは去らないものの、目を閉じて、じっとしているうちに、速すぎる鼓動も、荒かった息も、少しずつ落ち着いていった。