幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 夏バテでもしたかな、と思ったのが最初だった。

 不思議なほどに食欲がないのだ。

 大好きな料理やスイーツであっても食べたいと積極的に思えないし、会社でもお弁当を残してしまうことがちらほらある。

 それになんとなく体がほてっているようにも感じる。

 まるで夏の暑さが体の中に存在しているようだった。

 奇妙に感じたけれど、別にそれほどおかしいとは思わなかった。

 毎年、軽いものなら何回か夏バテを起こしている。

 涼しいところで過ごすようにして、食欲が湧くようなものや、消化のいいものを食べて、しっかり涼しくした部屋で、たっぷり眠る。

 そうすれば大抵、落ち着くのだったけれど、今年のそれはちっとも収まらなかった。

 それどころか、日に日に強くなっていくように感じられて、沙也は内心、首をひねるばかりだった。

 夏バテにしては症状が重いと思う。

 でも仕事はお盆休みが来るまであるのだし、休むほどの体調不良ではない。

 だから少し無理をして通勤していたのだけど、その日は特に暑い日であった。