幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 酸素不足で少しふわふわしてくる頭の中、甘いキスを受けながら、沙也はぼんやりと、起こりもしないことを考えてしまった。

 そのくらい、非現実で、甘美な時間だったのだ。

 それでも、清登がそんなことをするものか。

 沙也の息が止まってしまうよりずっと前に、そっとくちびるを引き、再び沙也の頬を包んできた。

「ごめん、苦しかったか?」

 とろっとしてしまっただろう、沙也の瞳を覗いて、優しく聞いてくれる。

 だから沙也の瞳は、もっとやわらかくなってしまった。

「う、……ん、……はぁ、だい、じょうぶ……」

 目を細め、幸せいっぱいという表情と声になったようだ。

 清登が困ったような表情はまだなくならないものの、笑顔になってくれたから。

「沙也が望んだんだからな」

 やがて沙也の呼吸が少し落ち着いた頃、清登はそっと沙也を抱き上げた。

 そんなふうに言うので、沙也はおかしくなってしまう。

「うん、わかってる」

 そんなこと、思っていないくせに、とわかってしまったのだ。