幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 結ばれてしまえば、そんなこと、到底できなくなるとわかっていた。

 泣いてしまうだろう。

 縋ってしまうかもしれない。

『あなたを離せない』という気持ちに沙也のほうだって、なってしまうだろう。

 だけど、それでも良かった。

 そんな生々しく、未練がましい、情けない別れ方になろうとも、今夜が欲しい。

 ちゃんと恋人同士になってから、終わりたいから。

「……できるわけないって、わかってるくせに」

 やはり永遠のように感じる数秒後、清登が静かに言った。

 沙也を自分から突き放すことなんてできないと、はっきり伝えてくれる言葉。

 沙也の胸の中が、かっと熱くなった。

 この言葉は、受け入れ。

 きっと、望んだことをもらえる。

 それを知った数秒後だった。

 清登の手が、沙也の肩へ移動した。

 一瞬だけ、このまま離されてしまったら、と、ぞくっとしたけれど、清登の手は沙也を突き放すはずはない。

 代わりに沙也を上向かせるような動きになる。