幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

「……ずるいよ、沙也」

 数秒だっただろうが、沙也にとっては何時間にも感じてしまうようだった間のあと、清登が、ぼそっと言った。

 苦しそうで、喉が詰まったような声だ。

 それを聞いただけで、沙也は悟った。

 きっと望みは叶う。

 最後の想い出はもらえる。

「ずるくていい……、清登くんと、今夜は恋人になりたい……!」

 だから最後のひとことを言った。

 本当にずるい、と思う。

 清登が『なにもしない』と決めた理由くらい、わかっている。

 清登が自分で言った『離せなくなる』ということと、同じたぐいの理由がたくさんあるのだ。

 触れてしまえば、きっと未練になる。

 綺麗に終われなくなる。

 美しい想い出だけにするなら、なにもしないのがきっと正しい。

 そうなれば、きっと明日の朝も、笑顔で別れられるだろう。

 少し寂しげになりつつも、「ありがとう」「また幼馴染として会おうね」と言って別れられる。