幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

「う、ううん」

 よって声は上ずった。

 どうしても緊張はある。

 しかし清登の歩みは、沙也のいるほうとは別のほうへ向けられた。

 沙也はきょとんとしてしまう。

 てっきりすぐにこちらへ来てくれると思ったのに。

 清登が向かったのは、奥にあるミニキッチンだった。

 冷蔵庫を開けている。

 ああ、喉が渇いたのかな。

 それならなにか用意しておけば良かった。

 そう予想して後悔もした沙也だったが、その予想は少し違っていた。

「沙也、はちみつとメープルシロップと、どっちがいい?」

 冷蔵庫からなにかを取り出しながら、清登は唐突なことを言ったのだから。

 今度はきょとんとするではすまなかった。

 沙也の頭の上には、はっきりクエスチョンマークが浮かんだだろう。

 はちみつ?

 メープルシロップ?

 どうして今、甘いものになるの?