幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 居室のソファに腰掛けて、一応スマホを手に取ったものの、画面を見る視線は上の空になってしまって、すぐにやめた。

 代わりに窓へ寄っていって、カーテンを少しだけ開ける。

 美しい夜景が広がっていた。

 高層ホテルの最上階なのだ。

 しかもすでに真夜中。

 夜が一番深いとき。

 そのためか、最初のデートの日、レストランで見たときよりも美しく見えるように感じられた。

 非日常の美しさは、この時間こそがまさに非日常なのだと沙也に実感させてきた。

 でも今、確かに沙也の元にあることに違いはないのだ。

 それなら、この美しい光景を楽しむのと同じように、素晴らしい時間を堪能するだけだ。

 待つ時間は永遠のようにも、一瞬だったようにも感じられた。

「お待たせ」

 ガチャ、と音が立って、清登が部屋に戻ってくる。

 バスローブを身に着けて、湿った髪を軽く拭いている。

 沙也の胸は、はっきり、どきんっと高鳴った。

 ついに、と構えてしまう。