幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 清登はあまり仕事のことを語らなかったから、本当に断片しか知らないけれど、なんとなく想像はついた。

 沙也の前では、会社跡継ぎの顔より、ただの幼馴染の顔でいたいから。

 仕事の話よりも、美味しいお菓子の店や、流行りの映画、それから沙也の日常の話。

 何気なさすぎる、そんな話題が中心だった。

 それで、沙也はその時間をとても心地良く思っていたのだ。

 でもその時間も、今夜でおしまい。

 わかっているから、そっと胸の奥へしまうことになるだろう。

「風呂、どうだった?」

 清登はさりげない様子でいくつかの画面を閉じて、タブレット端末を暗転させた。

 テーブルに置いてしまう。

「とっても素敵だった! バスタブがすごくゆったりしてて、バスボムもふわふわの泡ができててね……」

 沙也の声は落ち着いていた。

 それどころか明るかった。

 話すのを清登は優しい笑みで聞きながら、立ち上がる。

 次は清登がお風呂を使う番なのだ。

「そりゃあ楽しみだ。じゃ、俺も行って来るかな」

「うん、ごゆっくり」

 そんなやり取りで、清登は浴室へ向かっていった。