幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 もちろん、清登の立場は変わらない。

 祖父が会社経営者の御曹司であることは変わらない。

 きっといつかは父の跡を継いで経営者になるのだ。

 だからいつかは結婚すると決まっていたし、跡継ぎも作るとわかっていた。

 それでも、もしも『恋人』という存在が以前からいたなら。

 なにか変わっていたのではないか、とは思うのだった。

 ただ、沙也はそれを口に出さなかった。

 清登も同じだった。

 もう今、言っても遅いから。

 悲しいことだけど、後悔は先に立たないものと決まっているのだから。

 言ったところで清登を謝らせるだけだ。

 そんな言葉は聞きたくないし、言わせたくない。

 だから、これでじゅうぶん。

 むしろこんな素敵な時間をもらえただけでも、勇気がなかった自分にとってはもったいないくらいだと思う。

 そんな二日間は穏やかに過ぎていき……、やがて十日目の夜がやってきた。